438 雨ノチ晴レ #6

成長していく上で欠かすことのできない“水”を十二分に浴びて、生まれ変わったかのように枝の持つ茶色は本来の茶色を、黄緑色の葉は芽吹いた頃の透き通るような明るい黄緑色を取り戻していた。雨は色々なものを洗い流してくれると書いたけれど、浄化作用のほかに再生作用もあるようだ。いや再生というよりは甦生といった方が正しいか。この日の雨は木にも人にも何かを甦らせてくれる作用があったように感じた。
少々強引にビタミン剤や点滴で急激に人工的に元気を取り戻すでもなく、睡眠でゆっくりと回復するでもない。例えるなら、“人の手の入らない森の奥深くへ歩いていくと突然、視界が開けて目の前に現れる滝の飛沫（しぶき）を浴びて火照った身体を冷やす”感じ。疲れたはずの身体が一瞬で軽くなって、「あぁ、ここまで歩いて来た甲斐があった。」と思えるあの感じである。
僕が雨の持つ様々な作用を実感していると、横ではすでに“水”を享受し終えて次なる“太陽”の光を受けて生き生きとしている木々がいた。
わずか5分少々で去ってしまう気まぐれの雨には、移り気な木がお似合いだ。