431 存在感のコントロール

普段は日常の風景を撮り続ける僕は時折、非日常な空間で撮影する。
それは、ウェディングパーティでのひとコマだ。週末の散歩やドライブに出掛けて撮影する写真とは異なり、まったく違う時間の流れと空気の中に置かれる。そしてそれは常に相反する要素を抱えながらの撮影を意味する。
パーティでは参加しているゲストの一員となって溶け込むことも大事だし、同時に一歩引いて俯瞰視点で会場を見渡すことも必要になる。目立ってはいけないけれど、最も目立つポジション取りもしなければならない。さり気ないショットを残すために気づかれないギリギリの所でカメラを構え、シャッターを切るとすぐに離れる。“撮られている”という感覚をあまり残したくないからだ。そんな具合に頭と身体がフル回転しているとあっという間に時間が過ぎる。
だからいつも僕は始まる前の誰もいない会場に足を運んで、動かないモノたちをこうして撮ることにしている。僕なりの準備運動でもありまた嵐の前の静けさを愉しむための時間でもある。

※ウェディングで撮影した写真は左の欄外にもリンクがあります。