429 一筋の光 #2

陽は落ちて来ると海にほど度近い河の水面には一本の線のような道が出来上がった。
さっき見かけた橋よりも遥かに長く向こう岸は遠くに見えるのに、なぜだかそれほど苦もなく渡りきれそうな気がする。遠くに行けば行くほど道は確かで足元は揺るがないような気がする。水面（みなも）は小刻みに揺れて細波（さざなみ）が立っているのに、足元が覚束ないかもという心配はない。それもこれもきっと太陽が道標（みちしるべ）の如く導いてくれているからだろう。
どんな目印よりもこれほど頼りになるヤツはいないんじゃないだろうか。頼んでもいないのに照らし出される時は少々でしゃばりだと感じる時もあるが、こうした付き合いを重ねてみると実際は無口で何かを主張することもないことに気づく。しばしば何かを飲み込んだり包み込んだりはするけれど、それは強要ではないし拒否する人も少ない。
ひとり太陽に想いを巡らし、ひとり会話をし続ける日々は今日も変わらない。
相も変わらず沈黙を通す太陽だけど、川沿いの冷たい空気を暖めてくれる陽射しは穏やかだ。

「206 一筋の光 #1」（2005年7月1日更新分）もご覧下さい。
「橋」については「024 違う景色を」（2004年12月18日更新分）をご覧下さい。