142 下町という風景 #2

高架下の家々は一歩離れたところから見るのと、間近に近寄って軒先から見るのとではだいぶ印象が違って見えた。植木はきちんと手入れがされているようで、壁のひび割れは補修され、雨樋（あまどい）もひどく傷んでいる様子もなく窓ガラスの掃除も行き届いていた。見渡せば同じ環境の下で住んでいるお隣さんたちが軒を並べ、きっと連帯感も生まれるのではないだろうか。
そこには下町の昔ながらの変わらない情緒といい意味での生活感という日常の匂いが溢れていた。


撮影を終えると石焼きいもを売っているおじさんを見つけた。小さい頃、色々なものを売って歩く人たちが家の前を通り過ぎたのを思い出した。笛を吹く音で夕方の時間を知らされる自転車のお豆腐屋さん、スピーカーの音がいつも割れている竿竹売り、週に2回決まった時間にトラックで移動販売する八百屋さん、そして冬の間だけ小腹の空いた時間帯に姿を見せる石焼いも屋さん。2月の寒いこの季節に久しぶりに見かけた石焼きいもには抗（あらが）うことができずに、気がついたらおじさんの近くまで来ていた。
撮影してもいいかと尋ねると快諾してくれて中まで開けて見せてくれた。写真の並んでいるおいもたちは1日で売り切る数だと言う。


小さい頃は背が足りずに見えなかったフタの中のおいもたち、カメラのおかげもあってほんの些細なコミュニケーションから見ることができた。