136 何を照らす #1

都会に射し込む午後4時過ぎの傾き始めた陽の光は何を照らし出す。
六本木通り沿いの歩道ではこれからどこかへ向かう人たちと、もう帰ろうという人たちとが交錯して過ぎ去る人の流れは時間の流れを感じさせる。まるで、「時間に追われているから仕方ないんだ」と言い訳をするように道路に引かれた白線を無視して人は突き進む。
途絶えることのない人の足並みから作り出される影は僕の足元まで長く伸びる。その影も白線を貫いて太陽を背にして一直線に伸びる。太陽の影になって表情の見えない人たちは、僕を無視するかのように足早に通り過ぎる。太陽に正面から照らされている僕の眩しい顔をした表情はみんなにはわかるのだろうか。
都会に射し込む傾き始めた陽の光は、背中からは何も照らし出してはくれない。
もし太陽を背にして歩いていたら立ち止まって後ろを振り向こう。